遺産分割で敷金返還債務は相続分で承継される?(大阪高判R1.12.26)
被相続人B(亡くなった方)が所有していた甲建物を貸していた場合、賃借人Aに負っていた敷金返還債務は、どのように相続人に承継されるのでしょうか?
それが、大阪高判R1.12.26(判例タイムズ1474号10頁。以下「本件」といいます。)の論点です。
被相続の債務がどのように相続されるかの原則を確認しておくと、債務は、法定相続分で各相続人が承継するというのが判例です。これが敷金返還債務であっても適用されるとすれば、各相続人が法定相続分で承継するということになります。
一方で、被相続人が所有していた甲建物を相続人が法定相続分で相続するとは限りません。遺産分割で、例えば相続人のうちの一人であるBが甲建物を相続したとします。そのような場合でも、他の相続人であるCは敷金返還債務を承継しなければならないのでしょうか?甲建物は相続しないのに、甲建物の賃借人Aに対する敷金返還債務を負うのは少々おかしい感じがします。
この点、裁判所は、建物を相続した相続人Bが賃貸人になることを前提に、敷金返還債務もBのみが承継するとしました。従来から、不動産が譲渡された場合、賃貸人の地位及び敷金返還債務は新所有者に移転すると解されていました(現時点では、民法改正により、この点は明文化されています)。相続の場合も同様であるとした点に、この裁判例の意義があります。
遺産分割協議をする際、敷金返還債務もきちんと考えて対応しないと思わぬ不利益を受けることがありえますので注意が必要です。
こういうところが法律の難しいところですが、面白いところです!