このページでは、秘密証書遺言(民法970条~972条)の作成方法の留意点についてまとめています。
秘密証書遺言は、メリットがあまりないことから、ほとんど活用されていない方法です。
平成31年の相続法改正で、自筆証書遺言について、①財産目録をワープロ等で作成することが可能になったこと、⓶自筆証書遺言保管制度が新設されたことなどから、今後、ますます利用されない可能性がありますので、簡単な説明に留めます。
なお、秘密証書遺言としての方式に欠ける場合であっても、自筆証書遺言の要件を満たしていれば、自筆証書遺言としては有効です(民法971条)。
1 秘密証書遺言(民法970条)のメリット・デメリット
自分で作成した遺言(ワープロ等で作成することも可能です)を作成し封印したものに、公証人がその証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載し、遺言者及び証人とともにこれに署名し印を押す形の遺言書です。秘密証書遺言のメリット・デメリットをまず確認しておきます。
⑴ 主なメリット
・自筆で行う必要がない(ワープロ等を使える)。
・公正証書遺言に比べると費用負担が少ない。
・遺言内容を秘密にできる。
⑵ 主なデメリット
・作成要件に欠けると無効となります(自筆証書遺言と同じです)。
・保管方法によっては紛失の危険性が高いです(遺言者本人が保管することになります)。
2 秘密証書遺言の作成方法について
⑴ 作成方法(作成手順)
・遺言書本文を作成する。自筆である必要はなく、ワープロ等で作成することが可能です。代筆でも可能。
作成手順は以下のとおりです。
①遺言者が、署名(自筆)、押印した遺言書を封じ、遺言書に用いた印章で封印します。
②公証人1名及び証人2人以上の前に封書を提出して、遺言者が自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述します。
③公証人及び証人が封紙に署名押印します。
①未成年者、②推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、③公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人は、遺言の証人又は立会人となることができない(民法974条)。なお、証人とは別に、これらの者が遺言作成に立ち会っても、特段の事情のない限り、遺言は無効とならない。(最判H13.3.27)
第三者がワープロで作成した場合、当該第三者が「筆者」となりますので、遺言者以外がワープロで作成したものを使う場合、ワープロでの作成者を「筆者」として申述をしないと、無効となります(最判H14.9.24)。 ・
⑵ 加除訂正の方法
訂正箇所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じません(970条2項、968条3項)。
⑶ 保管方法について
特に定めはありません(遺言者自ら保管します)。
⑷ 検認
相続発生後に、家庭裁判所で相続人又はその代理人の立会をもって開封し、かつ検認手続をする必要があります(1004条1項、3項)