このページでは、遺産分割協議に基づく移転登記等の処理と第三者との関係についてについてまとめています。

相続に基づく移転登記などにおいても、第三者との関係が問題となるケースがあります。

1 遺産分割協議に基づく移転登記等の処理と第三者との関係について

⑴ 遺産分割の効力(民法909条)

遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じるとされています(遡及効)(民法909条本文)。ただし、遡及効は、第三者の権利を害することはできないとされています(民法909条ただし書)。

以上を前提に、遺産分割と第三者との関係を整理すると以下のとおりとなります。

⑵ 遺産分割と第三者との関係は

上記のとおり、遺産分割の遡及効は、第三者の権利を害することはできなません(民法909条ただし書)。

もっとも相続人は、法定相続分については登記なく第三者に対抗できますが、法定相続分超える部分は対抗できないとされています(民法899条の2第1項)。つまり、遺産分割による不動産の法定相続を超える持分の取得は、第三者との関係では対抗問題になります

相続人が遺産を構成する特定不動産の共有持分権を第三者に譲り渡した場合、第三者が当該共有関係の解消のためにとるべき裁判手続は、遺産分割審判ではなく、共有物分割訴訟となります(最判S50.11.7)。この場合、他の相続人からも共有物分割請求が可能と解されます(大阪高判S61.8.7)。

遺産に属する特定不動産の共有持ち分を第三者に譲渡した場合、民法905条の適用はありません(最判S53.7.13)。

民法905条1項
共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。

2 遺言に基づく移転登記等の処理と第三者との関係について

  場合分け   結論
相続分の指定/「相続させる遺言」法定相続分については登記なく第三者に対抗できますが、法定相続分超える部分は対抗できません(民法899条の2第1項)。
遺贈で、遺言執行者が指定されている場合受遺者でない相続人がした行為は無効ですが、善意の第三者に対抗することはできません(民法1013条2項)。
また、受遺者でない相続人の債権者(相続債権者を含む)は、法定相続分で相続財産に権利行使が可能です(同3項)。
遺贈で、遺言執行者が指定されていない場合受遺者は登記なく第三者に対抗できないと解されます(最判S39.3.6