このページでは、寄与分の成立要件及び、当該成立要件から、寄与分が成立するか否かが問題となるケースについて検討をしています。寄与分の成立要件は、①相続開始前の、②無償の、③特別の寄与行為で、④寄与と被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係があり、⑤相続開始時に効果が残存していることが必要です。このうち①~④について、留意点や裁判例を補足しています。
1 寄与分成立の要件
寄与分成立の要件を成立すると概要以下のとおりです。
①相続開始前の行為であること
②無償性(対価を受けていないこと)
③特別の寄与行為であること
④寄与と被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係があること
⑤相続開始時に効果が残存していること(民法904条の2第1項)。
このうち、①~④について、以下留意点・裁判例を補足致します。
2 相続開始前の行為であることが必要です。
・相続開始後の葬儀費用などは含まれません。
・相続開始後に被相続人の遠戚の費用等負担しても、寄与分とは認められないとする裁判例があります(和歌山家審S59.1.25)。
・相続開始後に相続財産を維持し又は増加させたことは、寄与分とは認められないとした裁判例があります(東京高決S57.3.16)
3 原則として無償で行った行為が対象となります。
・原則として対価を得ていれば、寄与分は認めれません(札幌高決H27.7.28)。
・ただし、報酬が到底十分でない場合は、寄与分が認められる余地があります(大阪高決H2.9.19)。そして、寄与分の実質的対価がある場合、当該対価相当額は寄与分から控除されます(盛岡家一関支審H4.10.6、広島高決H6.3.8)
・寄与行為があった場合、寄与者は、被相続人の債務を承継した相続人に対して報酬請求権(債権)を行使するということも考えられます。実務では、寄与分の主張と財産権の行使を選択的に認めていますが、双方を二重に請求することは許されないと解されています。
4 特別の寄与行為であることが必要です。
特別の寄与にあたるか否かは、被相続人と当該相続人の身分関係によって異なります。
例えば寄与者が配偶者の場合、夫婦間親族間の扶助(民法752条、877条参照)を超えるものであることが必要です。
5 寄与行為と被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係があることが必要です。
寄与分と認められるためには、当該行為によって被相続人の財産が減少を免れ、相続開始時まで遺産が維持されたという関係が必要です。この関係が認められた場合に限り、維持されたとみられる遺産の価額が寄与分として評価されます(大阪高決H15.5.22)。