このページでは、自筆証書遺言保管制度(法務局における遺言の保管等に関する法律)について説明しています
この制度は、令和2年に導入されたものですが、この制度により、それまで、公正証書遺言と比べて自筆証書遺言のデメリットとされていた自筆証書遺言の保管リスクが大きく軽減されました。ただし、遺言者が、遺言書保管所に自ら出頭しなければなりませんので、出頭できない状況ですとこの制度は利用できません(公正証書遺言であれば、公証人が例えば病院を訪問することが可能です)。
ここでは、保管制度の概要をご説明します。詳細は法務局の以下にご紹介する法務局の開設サイトをご参照下さい。

自筆証書遺言保管制度の概要は以下のとおりです。(条文は、法務局における遺言書の保管等に関する法律の条文番号になります。)。なお、遺言の保管申請、閲覧請求等には一定の手数料がかかります(12条)。

    項目        内容(概要)
遺言書保管所(2条)遺言者の住所地若しくは本籍地又は遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務大臣の指定する法務局(告示される)。但し、遺言者の作成した他の遺言書が現に遺言書保管所に保管されている場合は、当該他の遺言書が保管されている遺言書保管所となります。
遺言保管の申請先(4条)遺言書保管官(遺言書保管所に勤務する法務事務官のうちから、法務局又は地方法務局の長が指定する者)
遺言の様式要件(4条)法務省令で定める様式に従って作成した無封の自筆証書遺言
申請方法(4条)所定の申請書に必要書類を添付して申請しなければならなりませ。
遺言者が、遺言書保管所に自ら出頭しなければなりません。
保管遺言の閲覧請求(6条)遺言者は、所定の請求書と必要書類を添付して、自ら出頭したうえで、遺言書が保管されている遺言書保管所の遺言書保管官に対し、いつでも当該遺言書の閲覧を請求することができます。
保管の撤回(8条)遺言者は、いつでも、所定の撤回書と必要書類を添付して、自ら出頭したうえで、保管申請を撤回することができます。

なお、保管の撤回をしても、内容が撤回されるわけではありません。
また、保管の撤回でなく内容の撤回については、保管されている遺言を、事後的に保管していない遺言で撤回することが可能です(民法1022条)
遺言の保管期間(6条)遺言者の死亡の日(遺言者の生死が明らかでない場合は、これに相当する日として政令で定める日)から相続に関する紛争を防止する必要があると認められる期間として政令で定める期間が経過するまで保管されます。
相続人等の権利等(9条1項)相続人等(範囲は遺言保管法9条1項で規定)は、遺言者が死亡している場合、所定の請求書及び必要書類を添付して、遺言書保管ファイルに記録されている事項を証明した書面の交付請求、遺言書の閲覧請求することができます。
相続人等への通知(9条5項)相続人等からの請求により遺言書情報証明書を交付し、又は第三項の請求により関係遺言書の閲覧をさせたときは、遺言者の相続人等に遺言書を保管している旨が通知されます。被相続人の死亡により当然に通知されるわけではありません。
検認(11条)遺言書保管所に保管されている遺言書は、検認は不要とされています。