このページでは、遺留分侵害額請求を受けた側の負担の範囲(請求する側からした請求可能な範囲)や請求される順番についてまとめています。参考となる裁判例にも触れています。
なお、民法改正に伴い、遺留分減殺請求侵害額請求と表現が改められました。ただ、遺留分減殺請求という表現はなじみがあるので、遺留分減殺請求という表記も残していますこと、ご了承ください。
1 遺留分侵害額請求の請求の対象(確認)
以下が遺留分侵害額請求の対象となります。(民法1046条1項)
①遺贈
②相続させる遺言による遺産の取得(相続分の指定による遺産の取得を含みます)
③贈与
なお、保険金受取人の変更は民法1046条に定める遺贈又は贈与に当たらないとされています(最判H14.11.5)。
2 被請求者の負担の範囲
・遺留分侵害額請求の対象となる贈与は、請求額計算の基礎財産となる範囲に限られてます(民法1047条1項柱書2つ目の括弧書)。
・遺留分を下回る遺贈、贈与しか受けていない相続人は遺留分減殺の対象となりません(民法1047条1項3つめの括弧書)。
・被相続人が特別受益(生前贈与)につき持戻免除の意思表示(民法903条3項=遺産分割の対象としなくてもいいとする意思表示)している場合でも、遺留分の基礎財産には算入され、持戻免除の意思表示は、遺留分を侵害する限度で失効します(最決H24.1.26)。
つまり、当該贈与に係る財産の価額は、遺留分を侵害する限度で、遺留分権利者である相続人の相続分に加算され、当該贈与を受けた相続人の相続分から控除されます。
3 減殺の順番
遺贈・相続させる遺言→死因贈与→生前贈与の順番で、侵害額請求されます(民法1047条1項)。
複数の遺贈がある場合、その目的の価額の割合に応じて減殺します。ただし、遺言者が遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従います(民法1047条1項2号)。
贈与の侵害額請求は、後の贈与から順次前の贈与に対して行われます(民法1047条1項3号)。なお減殺を受けるべき受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担となり、他の受贈者に請求することはできません(民法1047条4項)。