このページでは、遺産分割調停の手続についてまとめています。
遺産分割協議が整わない場合、相続人は、家庭裁判所に対して遺産分割の調停または審判の手続を申し立てることができます(民法907条2項、家事法244条、274条1項)。原則として、審判でなくまず調停の申立てをしなければなりません(家事事件手続法257条1項)。また、調停を経ないで審判を申し立てても、調停に付されるのが一般的です。

このページでは、調停手続の流れ等を整理していますが、条文はすべて家事事件手続法です。

遺産分割手続の全体像について確認したい方は以下のリンク先をご参照下さい。

1 申立て

⑴ 申立方法

相続人の1名または数名が、他の相続人全員を相手方として申し立てます。

⑵ 管轄(245条1項、9条)

相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。
 相手方複数の場合は、いずれの相手方の住所地にも管轄が認められます。

なお、管轄権のない家庭裁判所に申立てられた場合、管轄裁判所に移送するのが原則ですが、事件を処理するために特に必要があると認めるときは、職権で、管轄権を有する家庭裁判所以外の家庭裁判所に移送し、又は自庁処理することができます。移送の裁判及び同裁判の申立てを却下する裁判に対しては、即時抗告をすることができます。

2 手続

⑴ 進め方(258条1項、54条1項)

調停委員会が間に入って、合意を目指した話し合いが行われます。

電話会議システム・テレビ会議システムの利用も可能です。

⑵ 当事者の排除(258条、43条)

相続人が相続放棄や、相続分の放棄・譲渡をした場合、家庭裁判所は当該相続人を手続から排除する決定が可能です。

廃除決定には即時抗告が可能です。

3 終了方法

⑴ 成立/不成立(268条1項、272条4項)

成立の場合:合意内容が調書に記載され、調書は確定判決と同一の効力を有します。

不成立の場合:不調として終了し、当該事件は当然に審判に移行します。

⑵ 調停に代わる審判(284条1項、286条、279条、287条)

家庭裁判所は、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で審判を行うことができます。

当該審判に対し異議申立がされた場合、審判の効力は失われます。逆に確定した場合は審判と同一の効力を有します。

⑶ その他(273条1項、271条)

当事者の取り下げ

調停をしない措置。調停をしない措置に対して、即時抗告はできないと解されています(東京高決S53.12.21)。

4 記録の閲覧等について(254条、47条)

・当事者又は利害関係は、家庭裁判所の許可を得て、記録の閲覧・謄写の請求が可能です。

・閲覧制限をしたい場合は、「非開示の希望に関する申出書」を付けて提出することで、閲覧許可を制限できる可能性があります。

・審判になった場合は、原則として当事者からの記録閲覧・謄写は許可されます。その場合、調停で閲覧許可が制限された資料も、審判で非開示となるのは家事事件手続法47条4項に定める非開示理由が存する場合に限られます。