このページでは、遺産分割協議・調停・審判の手続の全体像についてまとめています。
多くの場合が、遺産分割協議(=裁判所の手続によらず、当事者の話し合いにより合意をする方法)により終了しますが、調停審判に移行する場合もあります。

ここでは協議を中心に手続の全体像を確認し、調停や審判の細かい部分は別ページにてご説明をしています。

1 はじめに

遺産分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをするとされています(民法906条)。

遺産分割協議協議でまとまらなければ調停→さらに調停でも合意に至らなければ審判に進みますの方法で行われます(民法907条)。

2 遺産分割協議(民法907条1項

⑴ 遺産分割協議の内容、方法

遺産分割協議は、当事者間で協議を行い、合意内容に基づき遺産分割協議書を作成する方法です。

相続人が一堂に会することなく、持回りの方式により遺産分割協議をすることも可能ですが、他の相続人の分割内容が開示されていなかったときは、遺産分割協議が不成立になる可能性があります(仙台高判H4.4.20)。

一部分割も可能です(民法907条1項

⑵ 協議が整わない場合は、裁判手続へ

遺産分割協議が整わない場合、相続人は、家庭裁判所に対して遺産分割の調停または審判の手続を申し立てることができます(民法907条2項、家事法244条、274条1項)。

厳格な調停前置主義はとられていませんが、家庭裁判所は職権で審判に付することができるとされていることから(家事事件手続法274条)、実務的には調停を経ずに審判が申立てられても、調停に付されるのが一般的です。

3 調停

⑴ 調停前の処分

調停前の処分として、不動産の処分禁止、債権の処分禁止などが可能ですが、実務上はほとんど例がありません。

なお、調停委員会(または裁判官)は、調停のために必要であると認める処分を命ずることができるとされていす(家事事件手続法266条)。

⑵ 調停手続

調停は、調停委員会が間に入って、合意を目指した話し合いが行われます。
調停手続の内容についての詳細は、以下のリンク先をご参照下さい。

調停が成立しない場合、取下等されない限り、審判となります。

調停に代わる審判も可能です(家事事件手続法284条)。この場合、当事者は異議を申し立てることが可能で、異議があれば調停に代わる審判は効力を失います(家事事件手続法286条1項、5項)。

4 審判

⑴ 審判前の保全処分

審判前の保全処分が、例えば建物に居住する相続人の管理懈怠による朽廃防止や預金債権の無断引出し防止などで利用されることがあります。

⑵ 審判手続

審判は裁判所の判断を仰ぐものです。審判手続の内容については、以下のリンク先をご参照下さい。

一部分割の審判の申立ても可能です。この場合、遺産の一部を分割することにより他の相続人の利益を害するおそれがないことが要件とされていますが、一部分割の必要性については要件とされていません(民法907条2項)。

当事者全員の合意がある場合は、遺産分割協議の対象外の事項であっても、合意事項を前提として調停、審判は可能と解されています。また、調停で合意調書として記録化され、かつ審判期日において合意を維持することの確認が取れれば、調停での合意内容を審判の基礎資料とできると解されます(名古屋高決H12.4.19)。

審判に対しては即時抗告が可能です(家事事件手続法198条)。この場合、高等裁判所に係属します。また、特別抗告家事事件手続法94条)、許可抗告家事事件手続法97条)が可能で、最高裁判所に係属することになります。