このページでは、遺産分割の対象となる相続財産について整理しています。
遺産分割の対象となるのは、①被相続人が相続開始時に所有し、②分割時も存在する、③未分割の、④積極財産です。原則として遺産分割の対象にならないものについても、遺産分割協議において、相続人全員の合意により、遺産分割の対象とすることは可能です。

遺産分割の対象とならない相続財産について確認するほうが分かり易いかもしれません。その場合は以下のリンク先をご参照下さい。

1 遺産分割の対象になるものとは

遺産分割の対象となるのは、
被相続人が相続開始時に所有し、
分割時も存在する、
未分割の
積極財産
です。
具体的には以下のように整理されます。

なお、原則として遺産分割の対象にならないものについても、遺産分割協議において、相続人全員の合意により、遺産分割の対象とすることは可能です。

①は、相続財産に含まれることが前提となります。相続財産の範囲については、以下のリンク先をご参照下さい。

2 具体的な個別の検討

原則として遺産分割の対象となる財産は以下のように整理されます。

⑴ 現金

遺産分割の対象となります(最判H4.4.10

現金は、遺産分割審判で、調整弁として使われることがあります(京都家審S38.8.2、岡山家審S55.7.7)。

⑵ 預金

遺産分割の対象になります(最決H28.12.19、最決H29.4.6)。

なお、従前は預金は遺産分割の対象にならない(他の債権と同様に、法定相続分で当然分割)とされていました(最判H16.4.20)。しかし、上記のように判例変更され、相続預金は共同相続人の準共有になると解されます。

判例変更に伴って、従来いずれも可能と考えられていた以下の点について、今後も可能か否かが議論されています。①は可能、②は不可能、③は不可能という考え方が有力のようですが、はっきりしません。
①相続預金のある金融機関が、被相続人に債権(貸付)を有していた場合、当該金融機関は相殺が可能か、②相続人の債権者が、当該金融機関に債務を有していた場合、当該金融機関は相続人との関係で相殺が可能か、
③相続人の債権者は、相続預金のうち相続人の法定相続分について取立が可能か

⑶ 株式

遺産分割の対象となります(東京高判S48.9.17)。

遺産分割未了の株式の議決権については、以下のリンク先をご参照下さい。

なお、持分会社の持分は、定款に別段の定めがない限り死亡により社員が退社すること(会社法607条1項3号、608条)から、相続の対象になりません。この場合、退社により発生する持分払戻請求権は、その内容によって別途の検討が必要です(金銭で払戻しがされる場合は、金銭債権として検討されるものと考えられまする)。

⑷ その他の有価証券

国債・社債は、遺産分割の対象となります(最判H26.2.25)。

投資信託も、商品の内容にもよりますが、原則として対象になると解されます(最判H26.2.25)。

なお、委託者指図型投資信託の受益権の、相続開始後に発生し販売会社の被相続人名義の口座に預り金として入金された元本償還金又は収益分配金も遺産分割の対象となります(最判H26.12.12)。

裁判例の詳細を見る
「本件投信受益権は、委託者指図型投資信託(投資信託及び投資法人に関する法律2条1項)に係る信託契約に基づく受益権であるところ、共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである(最高裁平成23年(受)第2250号同26年2月25日第三小法廷判決・民集68巻2号173頁参照)。そして、元本償還金又は収益分配金の交付を受ける権利は上記受益権の内容を構成するものであるから、共同相続された上記受益権につき、相続開始後に元本償還金又は収益分配金が発生し、それが預り金として上記受益権の販売会社における被相続人名義の口座に入金された場合にも、上記預り金の返還を求める債権は当然に相続分に応じて分割されることはなく、共同相続人の1人は、上記販売会社に対し、自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができないというべきである。

⑸ 契約上の地位

原則として遺産分割の対象となりますが、被相続人の死亡により契約が終了してしまう場合もあり、終了してまうものは、遺産分割の対象からもはずれます。例えば、不動産賃借権は相続され、遺産分割の対象になります。

相続における契約上の地位の取扱は、以下のリンク先をご参照下さい。

⑹ 無体財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権など)

遺産分割の対象になります。