このページでは、相続財産の各相続人への具体的な割当方法(現物分割、代償分割、換価分割、共有分割)について整理をしています。
相続財産を各相続人に具体的に割当てる方法としては、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割があり、このの順番で検討されることが一般的です。
1 はじめに
相続財産を各相続人に割当てる方法としては、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割があり、このの順番で検討されることが一般的です。
現物分割、代償分割、換価分割、共有分割の、具体的な内容及び留意点を整理すると以下のとおりとなります。
2 現物分割
⑴ 原則的な方法
相続財産の現物を各相続人に割り当てる方法で、原則的な遺産分割の方法です。そのため、現物分割等が可能であるにもかかわらず、共有分割としたことが違法とした裁判例があります(大阪高決H14.6.5)。
なお、単位株制度の適用のある株式について、新たに単位未満株を生じさせる現物分割を命じることはできないとする判例があります(最判H12.7.11)。
⑵ 利用権の設定
・利用権の設定も可能と解されています。具体的には居住用建物の使用貸借権を遺産分割の方法として認めた審判(浦和家審S41.1.20)や、賃借権の設定を遺産分割の方法として認めた審判(東京家審S52.1.28)などがあります。
・配偶者が相続開始時に被相続人所有不動産に居住していた場合は、配偶者が配偶者居住権(新法1028条~1036条)の設定を受けることができます。
配偶者居住権については、以下のリンク先をご参照下さい。
3 代償分割
相続人の一人に相続財産を現物で取得させたうえで、当該相続人が他の相続人に対して自己固有財産を提供する方法です。例えば、事業を経営していた被相続人の後継者たる相続人が対象会社の株式や事業に供している資産を相続する代わりに、後継者以外の他の相続人に金銭などを与えるなどの方法を指します(東京高決H26.3.20)。
審判であれば、代償分割は、特別の事情があると認められるときに命じることができます(家事事件手続法195条)。
代償分割の方法を取る場合、債務負担する(=代償金を支払う)相続人に支払能力があることが必要で、代償分割を命じる審判は、債務負担する者の支払能力の有無も判断しなければならないとされています(最決H12.9.7)。そして、仮に務負担する者に支払能力が認められない場合は、審判は取消されることになると考えられます(参考裁判例:名古屋高決S47.11.27)。
4 換価分割
相続財産を換価(売却)して、換価代金を分割する方法です。
換価は、協議・調停においては、相続人全員による任意売却となります。審判においては換価競売が原則となります。
5 共有分割
相続財産を相続人の共有とする方法です。典型的には一筆の不動産を共有する方法です。