このページでは、遺産分割協議のまとめについて記載しています。

遺産分割協議においては、細かく検討することが多くあるため、細かい部分は別のページにリンクをはって説明をしています。ここは、遺産分割協議の全体像をご確認頂く趣旨のページになります。
また、ここでは遺産分割協議ができない場合(遺産分割障害事由)についても触れています。

1 遺産分割協議が必要な場合/遺産分割協議ができない場合

遺産分割は、概要下記の順番で検討します。遺産分割に特に期限はありませんが、相続税を申告・納税する必要がある場合(特に申告が要件となっている特例を利用する場合)は、相続開始から10か月以内に遺産分割協議をまとめることが望ましいと言えます。

⑴ 遺産分割が必要な場合

相続人が複数で、かつ遺産がある場合に遺産分割協議が必要になります。

⑵ 遺産分割協議ができない場合  遺産分割障害事由とは

以下の場合遺産分割協議ができません。
①遺言がある場合
②すでに遺産分割協議が存在する場合
③遺産分割が禁止されている場合
これらの事由を遺産分割障害事由と言います。遺産分割障害事由の詳細については、以下のリンク先をご参照下さい。

2 遺産分割協議の当事者(相続人の範囲の確定)

⑴ 原則的な遺産分割協議の当事者

相続人が原則的な遺産分割協議の当事者になります(民法907条)。
遺産の一部を一定の割合で遺贈された包括受遺者がいた場合、その者も遺産分割協議の当事者になります。包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされています(民法990条)。

なお、相続人の範囲に争いがある場合、紛争の内容により、審判により定めることができる場合もあれば、別途裁判によらなければならない場合もあります。

⑵ 例外的な遺産分割協議の当事者

例外的に遺産分割当事者になる者としては相続分を譲り受けた者や、相続人の親権者などがあります。逆に相続人であっても相続放棄した者などは、遺産分割協議の当事者になりません。

例外的な当事者については、以下のリンク先をご参照下さい。

⑶ 相続人であっても、遺産分割協議の当事者とならない者6つの場合

以下の者は、戸籍上は相続人であっても、遺産分割協議の当事者にはなりません。

①相続放棄をした者(民法939条
②相続欠格者(民法891条
③相続廃除の審判がなされた者(民法892条、893条
④失踪宣告を受けた者(民法30条) 死亡したものとみなされます(民法31条)。
⑤相続分を譲渡した者
⑥相続分を放棄した者

このうち、⑤⑥についてはなじみのない概念かもしれません。以下のリンク先をご参照下さい。

3 遺産分割対象資産の確認

相続財産すべてが、遺産分割協議の対象になるわけではありません。
また、少々難解ですが、本来は遺産分割協議の対象にならない相続財産であっても、当事者全員の合意があれば、遺産分割の対象にできるものもあります。

それぞれ、以下のリンク先で整理をしていますので、ご確認ください。

なお、特定の資産が遺産に属するか否かについて争いがある場合は、遺産分割手続とは別に、別途裁判により決着をつける必要があります。例えば、被相続人以外の名義(例えば被相続人の孫名義)の預金が、相続財産に入るか(遺産分割協議の対象になるか)が争われることがあります。これは、遺産分割手続の中で判断することはできないため、当事者間の話し合いで決着しない場合は、別途裁判で決着をつける必要があります。

4 遺産分割の具体的な進め方(協議→調停→審判)

⑴ 具体的な遺産分割の内容を定めるまでの流れ

相続人の範囲(上記)や、相続財産の範囲(上記)が確定したうえで、具体的な遺産分割の内容を決定することになります。

遺産分割の内容を決定するまでのおおまかなプロセスは以下の通りです。
①相続財産の評価の確定→相続財産総額の算出
特別受益寄与分がある場合の修正
③各当事者(相続人)の相続分率分の決定
具体的な遺産分割の内容の決定
遺産分割協議書の作成

遺産分割の内容を定めるまでの詳細については、以下のリンク先をご参照下さい。

⑵ 具体的な遺産分割の方法

相続財産を各相続人に割当てる方法としては、①現物分割、②代償分割、③換価分割、④共有分割があり、このの順番で検討されることが一般的です。詳細は以下のリンク先をご参照下さい。

⑶ 遺産分割は協議→調停→審判の順番で調整が行われます。

・遺産分割協議が整わない場合、相続人は、家庭裁判所に対して遺産分割の調停または審判の手続を申し立てることができます(民法907条2項、家事法244条、274条1項)。

厳格な調停前置主義はとられていませんが、家庭裁判所は職権で審判に付することができるとされていることから(家事事件手続法274条)、実務的には調停を経ずに審判が申立てられても、調停に付されるのが一般的です。

なお、相続財産の一部のみを分割する(先行させる)ことも可能です(民法907条)。

遺産分割協議・調停・審判の詳細については、以下のリンク先をご参照下さい。

5 遺産分割協議に基づく移転登記等の処理と第三者との関係について

遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じるとされています(遡及効)(民法909条本文)。ただし、遡及効は、第三者の権利を害することはできないとされています(民法909条ただし書)。

そこで、例えば、相続人の一人が他の相続人に無断で相続財産を第三者に売却した場合、当該相続財産を遺産分割協議で承継した相続人と第三者の関係が問題になります。以下のリンク先をご参照下さい。

6 遺産分割後に解決すべき事由が発生することがあります

通常は、遺産分割協議書が作成されれば(あるいは調停ないし審判が終了すれば)、遺産分割手続は終了しますが、事後的に解決すべき事項が発生することもあります。

⑴ 遺産分割の瑕疵

遺産分割手続の終了後に、遺産分割手続に瑕疵があったことが判明することがあります。
具体的には
相続人に関する瑕疵(遺産分割協議参加者が無資格であった場合など)
遺言に関する瑕疵(遺言が発見された場合)
参加者の意思表示の瑕疵
④その他手続上の瑕疵
などです。

その場合は、改めて遺産分割協議を行う必要が発生するケースもあります。

遺産分割の瑕疵については、以下のリンク先をご参照下さい。

⑵ 遺産分割協議の解除

遺産分割協議の当事者が、遺産分割協議の解除を主張することがあります。以下のように整理されています。

遺産分割協議において負担した債務の不履行を理由とした解除できないとされています(最判H元.2.9)。

当事者全員での合意解除は可能とされています(最判H2.9.27)。
なお、税務上は、当初の分割により相続人又は包括受遺者に分属した財産を分割のやり直しとして再配分した場合には、その再配分により取得した財産は、当初の遺産分割による取得者からの贈与として扱われることになります(相続税基本通達19の2-8 ただし書東京高判H12.1.26)。

⑶ 遺産分割協議の詐害行為取消の可否

遺産分割協議も詐害行為取消しの対象となります(最判H11.6.11。この場合、具体的相続分を超えて財産を取得した受益者が被告となり、遺産分割協議の相対的な取消しと財産の回復を請求することになります。