このページでは、相続分の譲渡についてまとめています。
相続分の譲渡というのは、あまり聞きなれない言葉ですが、相続人が、自己が相続財産に対して有する包括的持分又は法律上の地位を譲渡することで、民法にも出てくる概念です。相続分の譲渡の効果などについて説明をしています。
1 相続分の譲渡とは?その効果は?
相続分の譲渡とは、相続人が、自己が相続財産に対して有する包括的持分又は法律上の地位を譲渡することをいいます。要は、相続人として有する相続財産に対する権利義務を他の者に譲渡することです。
他の相続人に相続分を譲渡することも可能で、事案としては第三者に譲渡するのではなく、相続人間で譲渡される方が多いと思われます。
相続分全部を譲渡した者は、遺産確認の訴えの当事者適格を失います(最判H26.2.14)。
2 相続人間で相続分が譲渡された場合
相続人間で相続分が譲渡された場合、積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲受人の割合的な持分が譲受人に移転し、譲受人は従前から有していた相続分と新たに取得した相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割に加わることとなり、遺産分割が実行されれば、その結果に従って相続開始の時にさかのぼって被相続人からの直接的な権利移転が生ずるとされています(最判H13.7.10)。
相続人間において相続分が譲渡された場合、譲受人については法定相続分に譲り受けた相続分を加えた相続分を加えたものに相続税が課されます(最判H5.5.28)。
3 第三者に相続分が譲渡された場合
相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができます(民法905条1項)。これを相続分の取戻権といいます。なお、1ヶ月以内に権利行使しなければならないとされています(民法905条2項)。
相続分の取戻権の対象となるのは、あくまでも相続分の譲渡で、遺産に属する特定不動産の共有持分(=相続未分割の状態の共有持分)を第三者に譲渡した場合は、905条の適用はないとされています(最判S53.7.13)。
第三者に相続分が無償譲渡された場合、譲渡人は相続税の納税義務者となり、譲受人は贈与税を納付する義務があるとされています(東京高判H17.11.10)。
遺産が未分割の状態で相続分が第三者に有償で譲渡がなされた場合の相続税法上の扱いは明確でありません。