このページでは、相続人や受遺者に意思能力に問題がある場合、未成年者の場合、不在者(行方不明)の場合の対応についてまとめています。そのまま相続手続を進めた場合、手続が瑕疵をおびる場合があります。手続をやり直したり、あるいは紛争が起きるなどといったことが考えられます。
相続人や受遺者が未成年者等である場合、手続を進める前提として、以下のような対応が必要となることがあります。
1 意思能力等に問題がある場合
相続人や受遺者が未成年者等である場合、成年後見等の申立を検討する必要があります。
なお、成年後見人と成年被後見人がいずれも相続人となる場合、特別代理人の選任が必要となります(民法826条、860条)。
2 未成年者の場合
相続人や受遺者が未成年者等である場合、親権者が法定代理人となりますが、親権者も相続人等の場合、利益相反の関係から、特別代理人を選任する必要がある場合もあります(参考判例:東京高決S58.3.23)。
東京高決S58.3.23 相続にである親権者が、子供を代理して遺産分割審判に加わることが利益相反に該当するとした決定
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共同相続人の一人である親権者が他の共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の手続に関与することは、民法826条1項及び2項にいう利益相反行為に当たるものというべきである。すなわち、民法826条1項及び2項の利益相反行為とは、行為の客観的性質上親権を行う者とその子との間(1項)又は数人の子相互間(2項)に利害の対立を生じるおそれのあるものを指称するのであつて、その行為の結果親権を行う者と子との間又は数人の子相互間に現実に利害の対立を生じるか否かは問わないものと解すべきところ、遺産分割に関する手続は、その行為の客観的性質上共同相続人間に利害の対立を生じるおそれのある行為と認められるから、右条項の適用上は、利益相反行為に該当するものといわなければならない(最高裁判所昭和46年(オ)第675号、昭和49年7月22日第一小法廷判決、家庭裁判月報27巻2号69頁参照)。したがつて、共同相続人中の数人の子が他の共同相続人である親権者の親権に服するときは、右の数人の子のために各別に選任された特別代理人がその各人を代理して遺産分割の手続に加わることを要するのであつて、共同相続人の一人である親権者が数人の子の法定代理人として代理行為をしたときは、右の数人の子全員につき前記条項に違反することとなり、かかる代理行為によりされた遺産分割の手続は無効であるといわなければならない。そして、この理は、共同相続人の一人である親権者が相続人本人としての地位のほか子の法定代理人としての地位に基づいて一人の弁護士を代理人に選任し、その弁護士が親権者及び子の共通の代理人として手続に関与した場合であつても、異なるものではない(もつとも、親権者及び子のために選任された特別代理人の両者が共通の代理人として一人の弁護士を選任し、その結果その弁護士が手続に関与した場合には、前記条項の適用上は何ら問題がなく、双方代理行為についても右の両者があらかじめ許諾したものと解することができるであろう。)。してみると、本件においては、雪男及び松男につき各別の特別代理人を選任してこれを代理させた上、遺産分割の手続に関与させなければならないものというべきところ、この方法をとらなかつた原審判は、この点において違法であり、その余の点について判断するまでもなく取り消すべきである。
東京地判R2.12.25 遺産分割協議において、未成年の子の特別代理人には、常に当該子にその法定相続分相当以上の相続財産を取得させるよう協議する義務も、常に当該子の遺留分相当の相続財産を確保する義務もないとした裁判例
3 不在者(所在不明)の場合
不在者財産管理人の選任(民法25条)又は、失踪宣告の申立(民法30条以下)等を検討する必要があります。