このページでは、特別寄与分制度についてまとめています。特別寄与分制度は、2019年の相続法改正時に導入された制度です。寄与分(民法904条の2)が認められていなかった相続人以外の親族に対して、寄与分と同様の請求を認めたものです。

1 特別寄与分料の請求が認められる者(要件)

相続人でない者。なお、相続人であった者で相続の放棄をした者相続欠格者廃除によって相続権を失った者なども特別寄与分制度は認められません。

被相続人(=亡くなった方)の親族であること。なお、親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を指します(民法725条

被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者

なお、特別寄与分制度に基づく請求ができる者を特別寄与者といいます。

2 特別寄与分制度の内容

⑴ 特別寄与者に認められる請求権とは。

特別寄与者は、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができます。請求できる金銭を、特別寄与料といいます。

特別寄与料の金額は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して定めます(民法1050条3項)。
寄与分における実務上の取扱を参照にすると、第三者に頼んだ場合の日当×療養看護日数×裁量割合で計算される金額になります。なお、全相続人に対して一斉に請求する必要はありません。一部の相続人だけに請求することも可能です。

⑵ 特別寄与者が権利行使できる期間には制限があります。

特別寄与者が家庭裁判所に協議に代わる処分の請求ができるのは、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月以内で、かつ相続開始の時から1年以内に限られています(民法1050条2項)。
なお6ヶ月の権利行使期間は、請求の相手方ごとに個別に計算されます。

⑶ 請求される側の相続人の負担額

各相続人の負担額は、特別寄与料の額に法定相続分を乗じた額です(民法1050条5項)。

3 遺贈との関係(遺贈が優先します)

被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません(遺贈が優先する)(民法1050条4項)。

4 家事事件手続法の定め

特別寄与分の制度に関して、家事事件手続法は以下の定めを置いています。

(管轄)
第216条の2 特別の寄与に関する処分の審判事件は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
(給付命令)
第216条の3 家庭裁判所は、特別の寄与に関する処分の審判において、当事者に対し、金銭の支払を命ずることができる。
(即時抗告)
第216条の4 次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定める者は、即時抗告をすることができる。
  一 特別の寄与に関する処分の審判 申立人及び相手方
  二 特別の寄与に関する処分の申立てを却下する審判 申立人
(特別の寄与に関する審判事件を本案とする保全処分)
第216条の5 家庭裁判所(第105条第2項の場合にあっては、高等裁判所)は、特別の寄与に関する処分についての審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、又は申立人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、当該申立てをした者の申立てにより、特別の寄与に関する処分の審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。