このページでは、相続人以外の寄与が寄与分(民法904条の2)に該当するか否かが問題となる場合について検討をしています。例えば、相続人の子や配偶者が寄与行為をした場合に相続人は寄与分を主張できないか、代襲相続の場合被代襲者の寄与と代襲者の寄与のいずれを主張できるのかなどが問題となります。

1 はじめに

寄与分を主張できるのは相続人だけですが(民法904条の2第1項)、例えば、相続人の子や配偶者が寄与行為をした場合主張できないか、代襲相続の場合被代襲者の寄与と代襲者の寄与のいずれを主張できるのかなどが問題となります。

2 相続人の子供等の寄与行為がある場合、相続人の寄与分が認められないか

・原則として、相続人の配偶者や子供等の寄与行為により、相続人が寄与分を主張することはできませんが、事案によっては、これらの者が相続人の履行補助者的な地位にあるとして、相続人に寄与分が認められる場合があります。

・相続人の妻子の行為が、相続人の履行補助者的立場にある者の無償の寄与行為とされ、寄与分が認められた事例として東京家審H12.3.8が、相続人の配偶者の介護が寄与行為にあたるとされた事例として東京高決H22.9.13があります。

被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族は、相続人に対して寄与に応じた額の金銭の支払を請求することができます(特別の寄与の制度 民法1050条)。
相続人以外の寄与については、特別の寄与分の制度により解決を図ることも可能です。もっとも、特別の寄与分は被相続人の親族であることが要件ですし、対象も無償で療養看護その他の労務の提供をした場合に限られており、これらの要件を満たさない場合は、相続人の履行補助者による寄与分という考え方で解決されるものと考えられます。特別の寄与分の制度については、以下のリンク先をご参照ください。

3 代襲相続の場合の寄与分の考え方については議論があります。

代襲相続の場合の寄与分の考え方については議論があります。

⑴ 代襲相続人自身の寄与行為は、時期関係なく寄与分を主張できると解されます

代襲相続人自身の寄与は代襲原因の発生時期の前後を問わず主張できると解されます。例えば、被相続人Aの子供Bが被相続人Aより先に死亡して孫Cが相続した場合、孫Cが行った寄与行為については、子供Bが亡くなった後に行ったことだけでなく、子供Bが生きている間に行ったことについても、寄与分を主張できると解されます。

⑵ 代襲者は、被代襲者の寄与行為を主張できるか?

被代襲者の寄与についても寄与分が認められるなどについて議論があります。例えば、被相続人Aの子供Bが被相続人Aより先に死亡して孫Cが相続した場合、子供Bの行った寄与行為について、孫Cが寄与分を主張できるかという問題です。

議論がありますが、被代襲者(上の例では子供B)の寄与も、代襲者(上の例では孫C)は主張可能と解されます(東京高決H元.12.28、熊本家玉名支審H3.5.31)。